I've finded a reason to stay here,for long time.
某教授です。
変換なし、暗め、若干のグロ、微糖。
よければどうぞ。
変換なし、暗め、若干のグロ、微糖。
よければどうぞ。
「、つっー…」
失敗した。一人で魔法薬学の実験をしていたら、その液体が右手に掛かった。
手袋をはめていないのは、手袋のあるなしで微妙に変化する感覚の違いに気付くため。そのせいで私の指先はボロボロだったけど、今回のは、ヤバい。
ほんの数滴のしずくが私の肉と骨を溶かしてゆく。しゅわしゅわと焦げ付く、肉の燃える匂い。溶けていく指の痛みに意識を保つのが精一杯で、薄れそうになる視界を堪えながら左手を動かす。
ぱたり、と左手から力が抜ける。右手はだんだんと感覚が無くなってきた。
(っ、はっ…)
あと、少しなのに。
諦めきれずに伸ばした右手は、指先分の数センチ届かなくて。
そのまま視界がブラックアウトした。
***
まなうらがやけに眩しい。ここ最近の自由時間は薄暗い地下の実験室に篭りきりだったせいだろうか。つん、と鼻をつく匂いで此処が医務室だと感じる。
「 、」
名前を呼ぶ声がする。
「おい、 、」
その声に、はい、と返事をしたつもりだったのに私の喉からはうぅ、ともあぁ、とも判別つかないような呻く音が漏れた。
左手を握る温かさがある。
前髪をはらう指先がある。
私はこの指を知っている。
荒れてごつごつとしていて、優しいこの指先を。
その指が不意に離れていった。
重い瞼を叱咤して少し目を開けると、教授の黒い髪がほつれて前に垂れているのが見えた。
教授、と呼ぶと(おそらく声にはならなかったであろうその声を、かの教授は的確に判断した。)彼は静かな声でこう言った。
「…スリザリン、15点減点」
お前の薬学に対する危険の認知の甘さと、手袋もせず実験をする愚かさには最早吾輩は吐く溜息すら残っておらん。
罰則は後ほど伝える。その愚かさを二度と発揮しようとは思えぬようにな。
そう言うと、こちらを一瞥して教授は医務室を出て行った。あの冷たい瞳に睨まれた事は数え切れない程ある。だから私は、はい、と小さく返事をして教授が扉を閉めたのを確認して瞳を閉じる。
あの薬はどうなっただろうか。それだけが気掛かりだ。
誰かがうっかり触る前に片付けなくては。
そんな事を考えていると、医務室の扉が開いた。入ってきたのは教授で、私が疑問の眼差しを向けると、手にしたフラスコをこちらに差し出した。
良かった。教授ならまず間違いはない。
「お前が先程作ったものだ。」
「はい、ありがとうございます。」
その液体はフラスコの中で薄紫色をしていて、完成したように見える。
あとは、試すだけ。
少し震える左手で受け取り試薬に口付けようとすると、教授がそれを止めた。
「その薬品は完成している。」
「どうしてそう言えますか、まだ試していないのに。」
その効能は、苦痛。
体に薬物の反応を残すことなく、脳に直接痛みを感じさせる。
それを作った目的を、この人は知らない。
どんな思いで作ったかなんて、知らなくていい。
「先程吾輩が試したからだ。」
「……は?」
「身体を調べたが、全く薬を使った痕跡は残っておらん。30mlで約1時間持続し、無味無臭。…スリザリンに、50点追加だ。」
この薬を口にしたなら、教授はまだ苦痛を味わっているはずだ。指先から、衣擦れの音から、呼吸から、その五感の全てが彼の脳を刺激し痛みを引き出す。恐らく、滲む汗が流れる感覚ですら痛みに感じるだろう。教授の額に滲む汗や、いつもより速い呼吸からも分かる。
机の上の材料やメモを見たなら、なぜ試したのか。
なぜそんなものを作ったのかと問わないのか。
「教授、「お前が、」
これを口にする位なら、吾輩が全て飲み干してやる
意識が朦朧としているのだろう、ふらりと身体から力が抜けてベッドに倒れ込む。
…どういう意味ですか、それ
数十分後、効果が切れて教授が目を覚ますまで私は固まったままだった。
たすけて、と音にださずに呟いた
(どんなに昏い思いでそれを作ったのかも知らないのに、掻き乱すのはやめてよ)
失敗した。一人で魔法薬学の実験をしていたら、その液体が右手に掛かった。
手袋をはめていないのは、手袋のあるなしで微妙に変化する感覚の違いに気付くため。そのせいで私の指先はボロボロだったけど、今回のは、ヤバい。
ほんの数滴のしずくが私の肉と骨を溶かしてゆく。しゅわしゅわと焦げ付く、肉の燃える匂い。溶けていく指の痛みに意識を保つのが精一杯で、薄れそうになる視界を堪えながら左手を動かす。
ぱたり、と左手から力が抜ける。右手はだんだんと感覚が無くなってきた。
(っ、はっ…)
あと、少しなのに。
諦めきれずに伸ばした右手は、指先分の数センチ届かなくて。
そのまま視界がブラックアウトした。
***
まなうらがやけに眩しい。ここ最近の自由時間は薄暗い地下の実験室に篭りきりだったせいだろうか。つん、と鼻をつく匂いで此処が医務室だと感じる。
「 、」
名前を呼ぶ声がする。
「おい、 、」
その声に、はい、と返事をしたつもりだったのに私の喉からはうぅ、ともあぁ、とも判別つかないような呻く音が漏れた。
左手を握る温かさがある。
前髪をはらう指先がある。
私はこの指を知っている。
荒れてごつごつとしていて、優しいこの指先を。
その指が不意に離れていった。
重い瞼を叱咤して少し目を開けると、教授の黒い髪がほつれて前に垂れているのが見えた。
教授、と呼ぶと(おそらく声にはならなかったであろうその声を、かの教授は的確に判断した。)彼は静かな声でこう言った。
「…スリザリン、15点減点」
お前の薬学に対する危険の認知の甘さと、手袋もせず実験をする愚かさには最早吾輩は吐く溜息すら残っておらん。
罰則は後ほど伝える。その愚かさを二度と発揮しようとは思えぬようにな。
そう言うと、こちらを一瞥して教授は医務室を出て行った。あの冷たい瞳に睨まれた事は数え切れない程ある。だから私は、はい、と小さく返事をして教授が扉を閉めたのを確認して瞳を閉じる。
あの薬はどうなっただろうか。それだけが気掛かりだ。
誰かがうっかり触る前に片付けなくては。
そんな事を考えていると、医務室の扉が開いた。入ってきたのは教授で、私が疑問の眼差しを向けると、手にしたフラスコをこちらに差し出した。
良かった。教授ならまず間違いはない。
「お前が先程作ったものだ。」
「はい、ありがとうございます。」
その液体はフラスコの中で薄紫色をしていて、完成したように見える。
あとは、試すだけ。
少し震える左手で受け取り試薬に口付けようとすると、教授がそれを止めた。
「その薬品は完成している。」
「どうしてそう言えますか、まだ試していないのに。」
その効能は、苦痛。
体に薬物の反応を残すことなく、脳に直接痛みを感じさせる。
それを作った目的を、この人は知らない。
どんな思いで作ったかなんて、知らなくていい。
「先程吾輩が試したからだ。」
「……は?」
「身体を調べたが、全く薬を使った痕跡は残っておらん。30mlで約1時間持続し、無味無臭。…スリザリンに、50点追加だ。」
この薬を口にしたなら、教授はまだ苦痛を味わっているはずだ。指先から、衣擦れの音から、呼吸から、その五感の全てが彼の脳を刺激し痛みを引き出す。恐らく、滲む汗が流れる感覚ですら痛みに感じるだろう。教授の額に滲む汗や、いつもより速い呼吸からも分かる。
机の上の材料やメモを見たなら、なぜ試したのか。
なぜそんなものを作ったのかと問わないのか。
「教授、「お前が、」
これを口にする位なら、吾輩が全て飲み干してやる
意識が朦朧としているのだろう、ふらりと身体から力が抜けてベッドに倒れ込む。
…どういう意味ですか、それ
数十分後、効果が切れて教授が目を覚ますまで私は固まったままだった。
たすけて、と音にださずに呟いた
(どんなに昏い思いでそれを作ったのかも知らないのに、掻き乱すのはやめてよ)
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